コラム,  練習のヒント

ブレスコントロールは時々基本に立ち返ってみると良いかもしれない

フルートにおけるブレスコントロールはきっと一生付き合うものだと思います。それは、一概に「これだ」という確かなものというものは本人にしか体感として得られないものだからです。しかし、先人やプロ奏者のアドバイスから多くのヒントが貰えるのは確かです。そのアドバイスから自分のものとして実践していくとしても、人間の肉体は変化していきますので本当はそれらを含めて受け入れながら検討していく必要があります。

私にとってもフルート人生で常に付き纏う課題なのですが、基本にあるのは「コラム」コンテンツの中にあるのでヒントにしてくださればと思います。生徒さんにとっては答えが喉から欲しいところだと思いますが、以前にもお伝えしているように、答えは自分自身の中にあります。少なくとも私がそうでした。そのために、色んな本やエチュードを買っては実践の連続でした。頭でっかちになり本当の自分の姿、身体を見れなくなったりしていたのではと振り返ったりします。

では、ここからご一緒に考えてみることにしましょう。最も言われていることは『息が足りなくなると鳩尾から上半身、首、顎にまで力みが入ります。吸う時に脱力すると息は自然と入ってきます。』、『息を一定のスピードと量を出す時にも息を支えようとする時にも力みが入ります。』等です。

これは事実ですが、曲を演奏していく上で、フレーズ毎に息を吸う速さが微妙に変わります。なぜなら特にクラシック音楽のフレーズにおけるブレスも表現の一つでもあるからです。

呼吸する箇所に適切な間があって、速くも遅くもなく中庸な速さの曲では、どのようなタイミングで音を切り上げて脱力するかなどを意識することなく割と余裕を持ってブレスでき、そのため体への負担が減り、息を吸う音も気になりません。でも、そんな自分に都合良いところでブレスできる曲はほとんどありません。

最近、ロングトーンやスケール練習は毎日必要か?などということが時々話題になっているようで、私もそういったところ若いプロ奏者はどう考えているのか興味あって調べたりしますが、これについてはやはり納得のいくようなものを見つけることができませんでした。

というのも、人によってできることできないことが違うからだと思います。指が早く回らない人、息が続かない人、タンギングが上手くできない人、歌うという意味がわからない人、カウントがとれない人・・・などなど、それぞれ強化する部分が変わりますよね。最も、全て完璧にできる人はいますし、かなり努力しているか、反対に苦せずしてできてしまう天才もいると思います。

ですので、一般的に推奨されている基礎練を万人に薦めることはしたくありませんし、何のために必要なものなのかを理解して必要なものを重点的に取り入れるのが良いと思います。24調のスケールとアルペジオはテクニックというより調性と楽曲を理解するためということも含まれますので、覚ええると曲を演奏する上で応用できるようになり譜読みも楽になります。また4度や5度の展開型アルペジオでは音程やハーモニーの練習になります。自然に浮かぶようになれれば毎日する必要もなくなるし、その日行うのは今の自分に必要なものだけピックアップすると良いと思っています。

また、レッスンに通っていると人によって違うアドバイスをするとか、前は違うことを言っていた、とか結構あると思います。それは「こう伝えたら理解できるかな?」という思いで言い方を変えたりすることが多々あるからです。ことブレスコントロールに関しては、多方面からのアプローチをしますが、初心者の人に、少し前から始めた人と同じことを要求できません。それは、そこでちゃんとした土台ができた上で言えることだったりするからです。

指導者の中には基本しか伝えない方もいますが、これも全てがきちんと伝わる可能性がないことを見据えた指導法によるのではないかと思います。余計なアドバイスをしてまったく違った捉えられ方をされてしまうのを防ぐ効果もあります。生徒に考えさせるという期待もあるでしょう。その分生徒はとても悩み、考えます。レッスンに練習した成果を持っていき、先生のお墨付きを貰えたら次へ進みます。この方法は昔の先生に多かったように思います。時間はかかりますが力がつきます。

それでは、本題のブレスコントロールはどうすれば良いのか、というところをお話ししてみたいと思います。初心者はもちろん、身体の変化に伴い何か違うと感じている方にも取り入れてみたい方法です。

この時お腹の中のいろいろな内蔵が入っていることはとりあえず横に置いておき、肺の代わりに存在するのは少し大きめの風船のような袋が呼吸器官からつながっているイメージでやります。

  1. 何もせず、お腹に手を当てて腹式呼吸をする
  2. 腹式と胸式を同時に感じて呼吸をする→風船がまあるく膨らんでいく
  3. 吐く時は(横隔膜を意識して)お腹から吐き出す→風船が徐々に萎んでいく
  4. 吐ききった時色んなところに力が入っているのを感じる
  5. 一瞬でその溜まった力を抜く
  6. どんな速さで息が入るか感じてみる
  7. 無理なく吸い込んだ息をまたゆっくりと吐く
  8. 4〜7を止まらず繰り返す

上記の動作を5分続けられますでしょうか?多分、せいぜい2〜3回やったら終わる方が多いのではないでしょうか?そして多くの場合最初は力が入っていることすら分からない方が多いのですが、この一連の動作を感じ取れるまで続けます。

また、この方法は音を出せない時や通勤や通学、どこでもできますね。

次は頭部管だけで揺れずに真っ直ぐな音を出してみましょう。普段呼吸しているときと同じように、連続的に吐いて、吸ってを繰り返します。いちいち止まらないようにしましょう。

この頭部管だけの練習でも、ただ息を吸ったり吐いたりする時と状況は変わっているはずです。どこかに力が入っているようだと同じ長さを同じように音をのばすことが困難になってきます。これも身体が慣れてくれば続けられるようになります。この頭部管だけのトレーニングを先生によっては3ヶ月〜6ヶ月かけて行っている方もいます。これがやはり基本だからです。

次は楽器を組み立て構えてみます。自分が一番安定して出せる音を選んで先ほどと同じように例えば7拍数えながらお腹から吐き切り→1拍のうちに脱力→吸い込み→吐き切るを繰り返してみましょう。かなり汗をかくのではないでしょうか。でも、呼吸というのは普段、吐いて吸っての繰り返しなので止まらずにできますね。それより少し負荷をかけた呼吸で、吐き出す量が多くなっても吐いて吸ってを一回一回立ち止まらずに繰り返してみましょう。

次に7拍から1拍ずつ増やしていって息を少しずつのばすにはどれくらいのスピードで吐く必要なのかも確認できます。所謂ロングトーンの練習ですね。

どうでしょう?楽器を構えるだけで自分が力む箇所が増えたのではないでしょうか?一つずつ感じておくことで自分が呼吸の動作でどこで頑張っているのかが分かりやすくなりますね。フルートは気合いよりも気を長く練習することが大事だと思います。

以上の楽器を構えてその箇所から力を抜くことが実感できたらソノリテでのロングトーン、スケールやインターバル、クロマチックをゆっくりと練習します。指を動かしたりするだけで力みが入ったりするのです。指を動かすだけでも、指の筋肉だけでなく他にも働いている筋肉があることが発見できるようになります。できるだけ楽に感じれるためにはどの力が必要なのか、不必要なのかも考えながら脱力できるところは脱力してみましょう。

基礎練と言われているこれらのものを一度に全て行うことはありません。必要なものだけ取り入れてみましょう。先生についている方は先生が何のためのアドバイスをしてくれたのか考えて行うと良いでしょう。先生というのは生徒さんの音を聞いただけでどんな練習が足りないか分かることが多々です。

その後はある程度自分の身体のことは理解できたら、好きな曲でいきなり練習して、できない箇所で繰り返し練習していくと良いと思います。または、曲を練習していく中で自分で足りない基礎トレーニングもわかるようになります。

あと、ブレス音が気になるという方は全身が少なからず緊張していることも多いのですが、気にしすぎるとかえって逆効果になることもあります。私自身がそういう気質を持っているのでとても良くわかります。

これまで師事したどの先生からもブレス音を指摘されたことはなかったのですが、本番を録音したことがきっかけでこれがとても気になりだして、先生にアドバイスを求めたことがありました。でも、軽く笑われ「気にしない」と言われましたね〜。私の性格を見透かされてますね。。。それよりも音楽全体の流れや音程、ダイナミクスをしっかりやることと。。

そうは言っても私自身がとても気になる点であるため、特に速めな複雑な曲や長いフレーズが連続している曲でこの問題の解決に至ってません。楽器を持たないでブレスをしても、普段は全く息の音がしないのに、早く吸おうとするとやはり音がしますので、もしかしたら『一瞬で沢山吸う』のイメージが強いのかもしれませんし、単に自分の気道が狭いだけなのかもしれません。

一つ、いつも参考にしているフルーティストがいます。アメリカのフルート奏者、エイミー・ポーターさんです。この3年間のコロナ禍期間に沢山のプロの演奏家が動画をアップしてくれているおかげでお手本とする動画を沢山みることができ本当にありがたいです。2つほど参考になるところから再生するように貼らせていただきます。

ポーターさんは本当、軽々と自由自在表現されていますが、構え方、フルートを支えている腕の角度、顔の向き、リラックスした肩、アンブシュアも、ブレスコントロールも素晴らしいです。特にブレスする時を観察すると顎に力みがなく、自然に下顎が動きます。私の場合顎関節症もあるのかもしれませんが、下顎が固定され上顎を上げて息をとってる気がします。

そしてポーターさん、腕の筋肉が凄いです。筋肉が落ちないよう日々筋力トレーニングされているのではないかと思われます。筋肉は歳を重ねるごとに痩せていきますので私は毎日ではないですがダンベル体操したりします。

最近テレマンのファンタジーシリーズをアップされていて、ひとつの動画内の前半では楽曲解説してくださっているのでとても勉強になります。そしてやっぱりゴールドの音、好きだな〜と思ってしまいます。

今回は飛ばさず読んで欲しかったのであえて目次を立てませんでした。最後まで読んでいただきありがとうございました。

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