リングキーとカバードキー、どちらが良いの?
いつもブログをご覧頂きありがとうございます。
今日はよく頂くフルートについての質問に私なりに回答したいと思います。
ということで、まずはじめに、タイトルの通り『リングキーとカバードキー、どちらが良いの?』の質問から。
私もある時期リングキーを推奨していた時代がありました。
結論から申します。
カバードだから、リングキーだからという楽器に対する優劣はありません。
どちらを選んでもれっきとしたフルートでちゃんと響きます。
響きに関してよく「塞ぐ穴からも響くので音の抜けが良い」などと言われていますが、確かにそう思う部分も否定はしません。
しかし、良く響く→大きい音、というのとは違うと思います。
そして、もうひとつ、キーに穴が開いていることでちゃんと塞がないと音が出ないので指の矯正に良いとも言われます。実際、私が2度目の買い替えの時にリングキーにした理由でもありました。事実私の場合はそのお陰でフルートの構え方から変わって結果的には良い方向へ進みました。
でも、それに頼らずとも良くなります。それにリングキーによって改善される人と苦痛になる人が居るのも事実です。それはその人がどのように手や指を動かしているか、手の大きさはどうか、、、によります。私の師匠もカバードのゴールドで素晴らしい演奏されますし、結局は自分自身なのです。
なので、「リングキーにすれば上手くなれる、または、上手い人はリングキーだ」などと言う方もいますが、今まで見て経験してきた中ではそうではない、とハッキリ言えます。だから「リングキーはカッコよい!上手くなる!」というある意味先入観みたいなものなのです。
私も初めて自分でフルートを買い替えるときにとても悩んだ覚えがあります。ここからは私がこれまでのフルート遍歴をお話します。
小学生の時習い始めの時はヤマハの一番価格の下のモデルを親が買ってくれました。当時のこのモデルではカバードキーしかなかったように思うのですが・・記憶が不確かですみません。月日が流れ中学生になっても続けていた私に親はなんと総銀性のセミハンドメイドのムラマツ、スタンダードモデルを買ってくれました。そのムラマツもカバードでした。
リングキーなるフルートがあるのも知らないくらい当時はリングキーのフルートはお店に並んでいなかったように記憶してます。少なくとも札幌では・・・。
高校生の時、同門のとても上手い大学生がリングキーを吹いてました。その時からリングキーは上手い人が吹く楽器、良く鳴る、フィンガリングもうまくいくし、私もリングキーのフルート欲しい!!と思うようになったのでした(笑)
しかしその欲しいリングキーを買うためには「社会人になってから自分で購入しなさい」と親から言われていましたので、この業界に入りプロの端くれになる頃までスタンダードモデルのムラマツで頑張ってました。そして、講師として、プレーヤーとして仕事が安定してきたとき3本目のフルート(当時はDNモデルと言われていた)を自分で購入したのですが、リングキーにすると決めてはいたものの、今度はインラインかオフセットかで悩むようになり、最初からインラインは厳しそうだなと思い、オフセットを選んだのです。
でも、音はどうかと言われれば、それほど自分好みの響きにならず、きっとインラインじゃないからだ、と理由付けしてしまいました。
それから1~2年ほど経ったころ、思い切って師匠に相談してみたところ、フルートは正確なスケールと頭部管の歌口カット技術等が大事ということで、やはりムラマツ(ムラマツの回しものではまったくなく、ずっと使っていて安心だったからなのですが)の、今度は音孔引き上げ(ドローン)ではなく、管の歪が無いと言われるハンダ付(ソルダード)にしました。
所謂、ムラマツSRモデルのH足部管モデルです。注文から3年ようやく今所有しているフルートを手にしました。その時思ったのは、リングキーだからというのではないということが身をもって知りました。なんといえば良いか・・・頭部管に息を当てた瞬間に今までにない手応えを感じました。歌口に当てた息が適度な抵抗感を感じ管全体が鳴り響きました。すべてがバランスよく息が音になっていると確信したのです。
しかし年齢ととも指がギクシャクしはじめ音にならないことも度々出てきました。それまでの楽器を支える筋肉の使い方が変わり始めていたのだと思います。そういえば、先生から「リングキーを吹きたいのなら35歳までにしなさい」と言う言葉を思い出しました。
リングキーにしてからもう数十年経つ自分の指を観察してみると、右手の中指と薬指の間は若干離れていて、穴を塞ごうとするときに薬指が伸びてしまうのでそこが不自然さがあると分かります。フルートを吹かない一般の人は、その指の間は開きづらいですよね。薬指は付随筋なので思うように動きませんしイラっとする経験は誰しもあります。
それなりに年齢を重ねると20代の時の筋肉の使い方が変わってきて、その薬指はさらに動きづらくなりきちんと押さえられるまでになるまで時間を要すると思います。下手をすると腱鞘炎など指の故障にもなりかねません。「リングキーを吹きたいのなら35歳までにしなさい」という指定はこういうことだったのかと理解しました。
もちろん、そういう人ばかりではありませんし、70代になってもきちんとリングキーで演奏されている方も沢山いるでしょう。若いときからの訓練で筋肉の貯金もあるだろうし、手が大きいか、柔軟性を保っていると思われます。
※ということで、年齢に関係なく指と指の間が開きづらい方、手が小さい方、腱鞘炎持ちの方は要注意です。
穴埋め用のプラグも売っていて、それで埋めればいいことじゃない?と言われてしまいまそうですが、それこそプラグがシリコン製だからなのか音が妙に籠った響きになっていて結局それは使わずに吹いてました(笑)埋めれば良い、という単純に済むことでもないと思います。まして、穴を埋めるのであればリングにする意味がほとんど無いように思ってます。
それは吹き手が一番分かることで、私の周りには少なからずこういう経験をしてカバードに変えたと言う人が結構います。
ということで、カッコいいからリングキー、上手くなりたいからリングキーという論はナンセンスだということです。
今、私は中学生の頃買ってもらったムラマツのスタンダードモデルにまた戻りつつあります。C管なのでそれだけでも軽く感じますし、音も丸くて綺麗な音できちんと響きます。これまで、いろいろな奏法を試したりしてきたものが、このスタンダードモデルでもとても良く響かせることができるようになりました。
しかも、総洋銀の安価なフルートは一番良い音かどうかは別として良く鳴るように思います。(銀か洋銀かという話題もいつかお話したいと思います。)音色の変化にはあまり期待はできませんが・・。
良い楽器というのは本当にバランスがよく、よく調整され、スケールが正確であるということで、リングキーでもカバードキーでも音色の違いは若干ありますが同じことなのだと言えます。
追記>>
リングキーを買ってどうしてもフィンガリングや音が上手くいかない人はプラグはそんなに高くないので埋めてみても良いでしょう。
できればシリコンではなくて、もう少し固い素材(軽くて)があれば良いですね。コルクを使うと良いよと聞いたので今度自作してみようと思います。できたらまた記事にしたいと思ってます。
コルクで思い出したのですが、私が持っているヤマハのピッコロは良く鳴ります。ピッコロを調整に出したときにヤマハのリペアの方が「この部分、パッドはコルクに交換すると良く鳴るようになりますよ。」と言われ、それならと交換をお願いしてちょっと変わったピッコロになってます。
コルクはフルートと相性が良いのでしょうか?ヘッドにもコルク使われてますし、そのほかのキーの台のように使われてますね。
とても長くなってしまいました!それでは、次回をお楽しみに!