ゆっくりと曲をさらうということ
今回は長年フルートを吹き続けている人で
そんな中何か指の不調などで思うように吹けなくなったと思う人に
参考になるかもしれないことを書いてみようと思います。
多分どんな楽器でも同じではないかと思いますが。
感じ方や症状の出方も違うので一概には言えないことかもしれません。
あくまでも私自身が体験ですのでご了承ください。
また、多分どの先生も言っていることで耳タコな話だけれど
本当にそれを実践しているかどうかが大切なポイントです。
最近、ありがたいことに以前演奏した曲を再演する機会に恵まれました。
以前苦労して仕上げたことのある曲だからと高を括るのですが
しかし、徐に本棚から引っ張り出された楽譜を広げ吹いてみると
「あらら〜、と残念なことにまったく吹けない。」
目から入る情報がストレートに指に伝わらない。
おまけに、指定されたブレスマークまで息がもたない。
しかも、以前苦労せずにできていたところがまるで動かない。
指がバネ仕掛けのように意思に反する動きになる。
(フォーカルジストニアとも言われる)
ここ数十年そういったことに悩まされ続けてきました。
やはり解決への早道は「できる速さで演奏する」ということです。
このできる速さというのも曲者で
ようするに、できない箇所、またその前後の範囲がうまくできる速さで
ということになるでしょうか。
テンポ120の曲があるとして吹けないところが何箇もある場合
一拍が60〜80くらいにするのです。
そこがすんなりできる速さにまで下げて吹いてみる。
その曲の初めからその速度で吹き通してみる。
大抵は冒頭部は楽でつい早く過ぎ去りたい気持ちになるところ
上手くいかない箇所に来た時の自分の身体の反応が違うことに気づくでしょう。
こんなに遅いテンポなのに、ここでは指の運び方に違和感を感じます。
身体が勝手に動いたり変な指が動いたり・・・・
その違和感はどこからくるのかしばらく観察してみると
私の場合は大抵は左親指にあることが分かりました。
ブログやレッスンで注意してみているのがこの指。
時間はあるようで無い、
無いようでもあるしあるようにも思えます。
ここで無いと思ってしまうとさらに時間をロスする羽目になるから
自分には時間は関係の無いものと捉えます。
最初は80のテンポで吹き通すと10分以上かかったりします。
そこで今日の練習時間を設定してみます。
この曲にかけられる時間です。
とりあえず30分として設定して
その30でメトロノームを少しずつ上げていくと4回くらい通すことができます。
80→86→92→100
この時ただテンポアップしてできたことに喜んではいけない。
常に、親指の動作、その時の手首や腕の付け根、肩、首筋の反応を観察し
冷静に穏やかに観察しつづけ力が入らないようにする。
力が入っていないことが確認できたら
次の日は96くらいから始めて116まで上げる。
116で無理なく力まずに何度もできたなら表情をつける余裕が生まれます。
それから大体のテンポを身につけたならメトロノームを外して練習します。
以前吹いた曲だから吹けるだろう!という思い込みは捨てましょう。
セッカチな性格だと結構それが難しくなります。
そして、できると思い込んで本番近づいてきたあたりに行うと時間が足りなく焦ります。
精神的にも余裕が無くなり早いテンポのまま
自分が望んだテンポに近づけて練習してしまうと
かえって良くない結果になることの方が多い。
実際私はそれをしてしまっていました。
常に気持ちにゆとりを持てる環境を自分で設定する必要があります。
しかし、このゆっくりのテンポで少しずつアップしていくことは
他に発見することが多くなりメリットが大きいことに気づきます。
そして、最近は精神面が大きく関わっていることもあることに気づきました。
幼少の頃からの体験が積み重なった結果もあると知ったりします。
ああ、そうだったのか・・・そこか・・・
といった具合にです。
できない自分を責めてはいけませんし、難しいところですが。
年齢や環境、何かのせいではなくて、自分が作り出した世界だったのです。
最近高齢になってもきちんと演奏されているフルーティストの動画を観ることもしばしばあり
それもとても楽しそうです。
まるで誰かに「知りなさい」と私の前に提示してくれたのでは・・・。
自分が吹いて楽しいと思えるようにするのも自分次第ですね。
これからもできるだけ長く吹き続けられますように・・・。